王子様はカリスマホスト

その女性には見覚えがあった。

確か―――

「忘れちゃった?―――具合、いいみたいで安心したわ」

その女性の言葉に、唯菜の記憶もよみがえったようだった。

唯菜が入院していた病院の看護師だ。

しばらく2人が話しているのを見ていたが―――

ふと、三宅というその看護師が俺の方を見た。

「あら―――誰かと思ったら、お兄さんね」

その言葉に、唯菜が目を見開く。

俺は何となく嫌な予感がして、その場から離れようとしたけれど。

「―――毎日―――お昼くらいにきて、4時頃までいたかしら。よっぽど心配なのねって、若い看護師なんて昼近くになるとそわそわしちゃって。毎日楽しみにしてたのよ」

その話に、目を丸くしていた唯菜。

そりゃあそうだろう。

俺が毎日あの病院に行っていたことは、俺と親父以外知らなかったのだから。

親父にはもちろん、俺が口止めしておいた。

唯菜とは喧嘩ばっかりだ。

なんとなく知られるのは恥ずかしかった。

その後、その看護師とは別れ、唯菜を家まで送り届け―――ようとして。

「えと―――何で、毎日来てくれてたの?」

そう聞く唯菜に、俺は

「―――別に。親父も忙しいだろうから毎日行くのは大変だろうし、一応様子見に行っとこうと思っただけだよ」

と言って説明するしかなかった―――。