王子様はカリスマホスト

翌日も唯菜はしっかり不思議の国のアリスの衣装を身につけ、ホスト達の視線にも気付かず黙々と仕事をしていた。

俺はそんな唯菜を気にしながらも仕事をしていて―――。

ふと、メールが来ていることに気付く。

『今日はそっちに行けない。休憩に入ったら唯菜ちゃんを家まで送ってやって』

親父からだった。

その10分後、休憩に入ることになり、俺は事務所へ。

当然1人で仕事をしているだろうと思っていたのだが。

ドアを開けるとそこにはコーヒーを入れようとしている唯菜と、その背中にぴったりくっつくように立っている一樹さんが―――

見た瞬間に頭に血が上る。

「一樹さん―――何してるんすか」

俺に気付いた一樹さんはすっと唯菜から離れたけれど、その表情は余裕の笑みを浮かべていて、なぜだか心の中を全部見透かされてるような気がしてくる。

俺の態度に不機嫌になる唯菜を促し、店を出る。

イライラが募る。

さっきの、一樹さんと唯菜の映像がフラッシュバックして―――。

そんなイライラをつい唯菜にぶつけて。

唯菜もむっとした顔で言い返す。

そのまま口げんかになりそうになった時だった。

「あら、唯菜ちゃん?」

そう声をかけて来たのは、ちょっとふっくらした30歳くらいの女性で―――