王子様はカリスマホスト

店に入り、店内に誰もいないのを見て一瞬不思議に思ったが―――

トイレの方で物音がし、トイレ掃除でもしてるのかと思い、そちらに行く。

その時、ちょうどトイレから唯菜が出てくるところで―――

その姿に、俺は一瞬言葉を失う。

まるで、最近この辺でもたまに見かけるメイド喫茶のメイドそのもの。

短い裾のふわりと広がった、黒いワンピース。

白いエプロンの着いたそれは胸元が大きく開いていて、前かがみになろうものなら胸の谷間までばっちり見えそうなデザインだ。

白いソックスに、黒い革靴。

似合わないわけじゃ、ない。

というか。

すごく、かわいかった・・・・・。

だけど、なんだってこんな格好してるんだ?

「おま―――そのかっこなんだよ?」

俺の言葉に、むっと顔を顰める唯菜。

案の定、一樹さんの差し金で。

一体あの人は何を考えてるんだか―――

こんな格好であの階段も掃除するってのか。

下から見たらパンツ丸見えじゃねえか。

でも、こいつにそれを言っても伝わらないんだろう、と思いその場はそのままやり過ごしたが―――

着替え終わって店に行ってみればとっくに来ていたはずの千尋の姿はそこにはなく。

店の扉を開けてみると、思ったとおり千尋の奴が下から回廊を上がっていく唯菜のスカートの中を覗きこもうとしていたところで―――

「千尋、お前そろそろ着換えろよ」

俺のその言葉に、千尋ががっかりしていたのは言うまでもない―――。