王子様はカリスマホスト

そしてその日の帰りは千尋が唯菜を送っていくことに。

俺がそうしたかったのに、指名客が来ていたのでそれもできなかった。

はっきりと確信したわけじゃない。

だけど、千尋は少なくとも唯菜に好意を持ってる。

恋愛感情とまでいかなくても、いつそうなってもおかしくないと、俺は直感していた。

冗談じゃないぜ。

ずっと今まで唯菜一人をただひたすら思って来たってのに。

今さら、他の男になんか渡せるもんか・・・・・。

だけどそんなこと口に出せるわけもなくて。

あの後は唯菜と顔を合わせることもなく、翌日の出勤の時間にはすでに唯菜は家にいなかった。

「―――親父、本気で唯菜にバイトさせんの」

その言葉に、親父も困ったように肩をすくめた。

「仕方ないだろう。そうしないと、唯菜ちゃんも気が済まないんだろうし・・・・・。まあ、3ヶ月もやれば気が済むんじゃないかな」

暢気な男だ。

俺は溜め息をつき―――

「―――おれも今日は早めに行く。千尋だけじゃ心配だし」

その言葉に、親父が何か思い出したように口を開いた。

「ああ、そう言えば―――僕もそう思って、一樹君に頼んでおいたよ」

そん言葉に、ぴたりと部屋を出て行きかけていた足を止める。

「―――一樹さん?」

「ああ、彼なら安心だからね」

「あ―――そう」

安心。

一樹さんはあの店の店長で、年も一番上だし性格も穏やかで、仕事の指導をするには一番向いているような気もする―――が。

なぜか、胸がざわつく。

いつも笑みを浮かべている一樹さんはどこかあやし気な雰囲気を漂わせていて―――

「―――行ってくる」

俺は急いで、家を出たのだった・・・・・。