王子様はカリスマホスト

「あんた―――凛斗さんの客なの?まさか、彼女―――?」

千尋の声だ。

まだ新人の千尋には、客が着いていない。

だから、店に誰か来るとまず千尋が出迎えているのだが―――

「へ?―――や、違うから!彼女じゃなくて、あたしは―――」

この声―――唯菜!?

なんで唯菜が―――



「お前、何しに来た」

思わず声が低くなる。

なんでここに?

親父の奴が忘れたものを持って来たという唯菜に、お俺はいらいらと言い放った。

「ここは、お前みたいなガキが来るところじゃない。もう二度と来るな」

そう言って店に入り戸を閉める。

店の外で、唯菜が怒っている声が聞こえる。

冗談じゃない。

怒りたいのはこっちの方だ。

こんな時間に、こんな店に、女の子1人で。

一体何考えてるんだ!

親父の奴も―――唯菜にそんなことをさせるなんて!

そこまで考えて、はっとする。

この辺はあまり治安のいい場所じゃない。

もし帰り道で何かあったら―――

「あれ、凛斗さんどこ行くんですか?」

俺に声をかける千尋に

「悪い、先に休憩取る。ちょっと出てくるから」

そう言い残し、急いで店を出る。

すぐに唯菜の後ろ姿を見つけ、ホッとして少し離れて歩く。

こんな時間に、こんな危ない道を唯菜1人で歩かせられるはずない。

家まで無事に帰るのを見届け―――

俺はまた、店に戻ったのだった・・・・・。