王子様はカリスマホスト

一樹さんの言葉に、内心動揺していたけれど。

それを悟られないように肩をすくめる。

「そんなんじゃないですよ。ちょっと寝不足で、ぼーっとしてるだけです」

「そう?まあいいけど―――」


店がオープンし、さっそく客が来て俺を指名する。

店が始まって以来、ずっとナンバーワンという立場の俺には、指名客が後を絶たなかった。

おかげで親父もこの店のオーナーを続けていられるというわけだ。

今日の客は横浜で産婦人科をやっている女医だった。

忙しいらしく、ここに来るのは月に一度だけれど、くればいつも高い酒を気前よく入れてくれる上客だった。

「凛斗~、会いたかったわ~」

「俺も会いたかったよ。冴子さん、なかなか来てくれないから」

「だって~、今産婦人科医って不足してて大変なのよ~。夜中でもなんでも、お産があれば駆けつけなくちゃいけないんだから!」

「じゃあ、俺がその疲れを忘れさせてあげるよ」

そう言って微笑めば、大概の女はぽーっとなって俺に逆上せる。

2年もやっていればいい加減慣れるってもんだ。

それからほんの5分ほど経ったころ。

彼女の携帯が鳴りだした。

「あん、もうこれから飲もうって時に!」

やけくそ気味に携帯を手にする彼女は、それでもさすがに携帯を手にしたその表情は女医の顔になっていた。

「―――はい。―――わかったわ。じゃあそのまま入院させて。今帰るから」

溜め息をつきつつ、携帯を切る。

「ごめ~ん、凛斗。私いかなくっちゃ。急なお産が入っちゃって―――」

「そっか。残念だけど仕方ないな。出口まで送るから」

そう言って立ち上がる。

だいたい、冴子さんの場合は2回に1回はこのパターンなのだ。

それでもしっかり代金は払ってくれるんだから、店としては言うことないと言ったところだ。

そして店の出口まで彼女を送ろうと扉を開けた時―――