王子様はカリスマホスト

「凛斗、今日オーナーは?」

一樹さんの言葉に、俺は軽く首を振る。

「今日は休みで」

「そっか。例のいとこ、退院したんだろ?」

一樹さんはこの店の店長だ。

親父がこの店で最も信用している人間の1人で、今回のこともだいたいのことは話していた。

「はい。もう学校にも行っているし、明日からは普通に出てきますよ」

「ああ、それは別に心配してないけど―――。一緒に暮らすことになったんだろう?高校生だっけ?どんな子?」

「どんなって―――普通の女子高生ですよ。別にどうってことない―――」

「ふーん。でも、ずいぶん心配してたし―――大切な子なんだろ?」

にやりと笑う一樹さんに、俺は目をそらす。

この人の、何もかも見透かしたような視線は苦手だ。

大人の余裕を感じる男。それが一樹さんだ。

私生活は謎。

ずいぶん年上の女性といるのを見たことがあると、ホストの1人が言っていたのを聞いたことがあるけれど。

自分のことはほとんど何も話さず、いつも穏やかに笑っているような人だった。

「大切って―――そりゃあ、いとこだし、親父にとっては大事な姪だから。昔から、親父は溺愛してたし―――」

「オーナーにとっては、そりゃあそうだろうけど。凛斗、お前にとっても」

「俺―――ですか?」

「あの事故があってから―――ずっと元気がなかったろ。ぼーっとしてることが多くて。あんなお前を見たことなんてなかったから、驚いてたんだ。もちろん身内が亡くなったショックっていうのもあるだろうけど―――。それだけじゃない。お前にとって、きっとすごく大事な存在なんじゃないか?」