王子様はカリスマホスト

その日はずっと、唯菜は部屋から出てこなかった。

昨日の今日で、きっと疲れているんだろう。

静かだし、寝ているのかもしれない。

そう思った。

だけど。

親父が夕食の時間だと、唯菜の部屋の戸を叩いているのが聞こえた。

ほどなくして扉が開き、唯菜が出てくる気配。

俺は何となく気になって、そっと部屋を出た。

唯菜が洗面所に入って行くのを見て、そっとそこへ近付く。

そこから聞こえて来たのは―――

『―――やだ、これじゃ叔父さんに変に思われるよ・・・・・』

そんなつぶやきが聞こえ、ばしゃばしゃという水音。

顔を洗っているようだった。

『少しは、ましかな』

息をつく気配。

俺はそっと中を覗いた。

『何がましだって?顔洗ったくらいで元々の顔は治んねえぞ』

その言葉に、唯菜は驚いたように目を見開き、

『う、うるさいな!そんなんじゃない!急に現れないでよ!』

顔を赤くしてそう言った唯菜の目は。

微かに赤くなっていて―――

―――泣いてた、のか・・・・・