王子様はカリスマホスト

翌日、シャワーを終えて浴室を出るとそこに唯菜がいて驚いた。

思わずからかって―――ふと、考える。

ここには、時々ホスト達が泊ることがある。

それはこの家に住む時の条件で。

ホスト達が家に帰れなかったりしたときは泊めることになっているのだけれど―――

もし俺以外のホストと唯菜が、こうして顔を合わせたら。

そう考えたら、ついきつい口調で釘をさしていた。

『2階にも、来るな。こっから先はお前には入られたくない』

仕事仲間でもあるあの店のホスト達は、もちろん悪い奴らではないけれど。

それでも女を口説くようなことを商売としている奴らだ。

ルックスだって悪くない。

もし唯菜が口説かれたりしたら。

もし唯菜がホスト達の誰かを好きになったりしたら。

そう考えるだけでも落ち着かなかった・・・・・。



唯菜がうちへ来てから、俺は唯菜にわざと意地の悪い態度を取っていた。

それは、唯菜のあの純粋な瞳に見つめられると照れくさくなってしまうのと。

唯菜の純粋さが伝わってくるほどに。

やっぱりホストという仕事をまだ知られたくない、と無意識に思っていたのかもしれない。

小さいころから何も変わっていない唯菜。

純粋で、優しくて、強気で―――。

俺は、唯菜とどこで再会しても、きっとすぐに唯菜だとわかっただろう。

だけど、唯菜は俺に気付かなかった。

この家にいる男なんて、親父以外には俺しかいないと、考えればすぐにわかることなのに。

その違いが・・・・・

俺の気持ちと、唯菜の気持ちの違いを現しているようで―――

俺は、素直に唯菜に接することができなくなっていた―――。