「お兄ちゃん」

ずんずんと前を歩くお兄ちゃんに、あたしは声をかける。

「お兄ちゃんってば!」

無視するお兄ちゃんにさらに大きい声で呼びかけると、ようやくぴたりと足を止める。

「―――なんだよ」

不機嫌な声はいつもと同じだけれど。

こっちを見ないのはなんで?

「えと―――何で、毎日来てくれてたの?」

そんな話、全然聞いてない。

叔父さんだってそんなこと言ってなかった。

「―――別に。親父も忙しいだろうから毎日行くのは大変だろうし、一応様子見に行っとこうと思っただけだよ」

「叔父さんに頼まれて―――?」

「そういうわけじゃない。ただ、親父がいないときに目が覚めることもあるかもしれないと思って、行ってただけだ」

それだけ言うと、その話は終わりとばかりにお兄ちゃんはまた歩き始めた。

なんとなく、不思議な気持ちだった。

たとえそれが叔父さんを気遣ってのことだったとしても。

お兄ちゃんが、毎日病院にきてくれてたという事実が。

ほんの少し、気持ちを明るくしてくれたような、そんな気がした・・・・・。