店を出ると、少し前を歩くお兄ちゃん。

怒っているのがその後ろ姿から伝わってきて、なんだか話しかけることができない。

「―――一樹さんと、何してた?」

「え―――何もしてないよ。ただ、コーヒー飲もうって言われて、入れようとしてただけ」

「仕事、サボんなよ」

「別に、サボってたわけじゃ―――休憩したらって言われたから、コーヒー飲もうとしてただけ」

ちょっとムッとして言うと、お兄ちゃんがぴたりと足を止め、振り向いた。

「コーヒー入れるのにあんなにくっつく必要があんのか」

「くっついてなんか―――」

「くっついてただろうが。お前も一応女だったらそのくらい気をつけろよ!馬鹿か!」

「な―――何よ、なんであたしが―――」

頭に来てそう言い返そうとした時。

「あら、唯菜ちゃん?」

突然名前を呼ばれ、驚いて振り向く。

そこにいたのは、ちょっとふくよかな感じの女の人で―――

どこかで、見たことがあるみたいだけど―――

―――誰だっけ?

「忘れちゃった?―――具合、いいみたいで安心したわ」

「え―――」

にっこりと微笑む優しそうな人。

その笑顔に―――

「あ!あの病院の!」

そうだ。

あたしが入院していた病院。

あの病院にいた、看護婦さんだ・・・・・。