書類の整理に没頭し始めたころ―――

部屋の扉がノックされ、一樹さんが顔を出した。

「あれ、オーナーまだ来てないの?」

「あ、今日は来れないそうです」

「え、そうなの?なんだ、じゃあ―――凛斗と一緒に帰るの?」

「はい」

「ふーん・・・・・」

一樹さんが、顎に手をやり、何かを考えているような素振りをする。

「あのさ―――ちょっと聞きたいんだけど」

「はい?」

「今、あの家にオーナーと凛斗と3人で住んでるんだよね?」

「はい」

あたしが頷くと、一樹さんはなぜかあたしの顔をじーっと見つめた。

―――な、何?

「あ、あの―――何か―――」

「凛斗と―――何かあるのかな、と思って」

「凛斗―――お兄ちゃんと?何かって、どういう意味ですか?」

聞かれている意味がわからなくて、首を傾げる。

「いや―――昨日もそうだったけど、なんかちょっと言い合ってたでしょ、凛斗と。なんかあったのかと思って」

一樹さんの言葉に。

あたしは、凛斗お兄ちゃんのあたしに対する態度を思い出し、ずきんと痛む胸を押さえた。