翌日も、あたしはバイトへ。

この日の衣装は、不思議の国のアリス・・・・・。

衣装部屋に入るとすぐに、それが目の前にかけられていたのだから、やっぱりそういう意味なのだろう。

あたしは溜め息をつきつつトイレでその衣装に着替え、ほうきと塵取りを片手に掃除をするべく外に出たのだった・・・・・。

大通りから、一本わき道に入った細い路地。

お店の入口はそこにある。

わかりにくいというほどではないけれど、一見暗くてさびしい道なので、あまり人目には触れないで済むというのがせめてもの救いだ。

不思議の国のアリスのコスプレで道を掃除している姿というのは、ちょっと不思議な光景だと自分でも思うので―――。

その間にも、1人、また1人と出勤してくるホスト達。

一応昨日、全員に紹介してもらっているので、みんなにこやかに挨拶はしてくれる。

さすがと言うべきか、全員ホストなので愛想笑いもどこか女性を誘惑するような、妖しげな笑顔が多いような気がして。

気持ち悪いとまでは言わないけれど、『これも職業病かな』と、ちょっと呆れたりしていた。

外の掃除が終わり、今度は中の掃除。

その頃、ようやくお兄ちゃんが出勤してくる。

たまに早いときもあるけれど、どうやらお兄ちゃんはいつもこのくらいの時間にきているようだった。

もう慣れてしまって、着替えなどに時間がかからないというのもあるだろうけれど、そこはナンバーワンの特権とも言うべきもので。

たとえば、千尋さんとお兄ちゃんは都市的には1つしか違わないけれど、ナンバーワンのお兄ちゃんと、まだまだ新人の千尋さんでは立場が全く違ってきてしまうのだ。

だけど、最後に出勤してくるのはお兄ちゃんの優しさでもあるんだと、千尋さんは言う。

ナンバーワンがあまり早く来ていると、その後に来たホスト達の立場がない。

と、翌日にはみんながお兄ちゃんよりも早く来ている、という状況になってしまうのだ。

だから、わざとお兄ちゃんは最後の方に来るのだということだった。