お兄ちゃんの突然の出現に千尋さんも驚いた顔をしていた。

「うわ、びっくりした。凛斗さん、いつの間に―――」

「いいから早く行けって。お前も、仕事サボってんじゃねえよ」

じろりと睨まれ、むっとする。

「サボってないし。ちょっとしゃべってただけでしょ?意地悪な姑みたいなこと言わないでよ」

あたしの言葉に、お兄ちゃんの眉がピクリとつりあがる。

「てめえ」

「そっちこそ、仕事の邪魔なんだから話しかけないで」

バチバチと、火花が出そうなほど睨み合って。

ほぼ同時に、2人でふんとそっぽを向く。

「―――後20分で開店だ。10分で終わらせて、事務所に行ってろよ」

そう言い残し、行ってしまうお兄ちゃん。

軽く、溜め息をつく。

なんだか、あたしとお兄ちゃんの関係ってどんどん悪くなって行ってる気がする―――。

お店が開店してからは、あたしは事務所に中で書類の整理などをすることに。

叔父さんも書類に目を通したり、パソコンをいじったりと忙しそうだった。

静かな部屋での作業。

途中、お茶を入れて飲んだりはしたけれど、あまりしゃべることもなく過ぎて行く時間。

その時間が、今のあたしには心地よかった。

叔父さんとならしゃべらなくても気まずいという感じはしない。

それが自然な気がして―――

パパといた時と似てる。

なんとなく、そう思っていた―――