「一応ここのバイトってことで、服を着替えてほしいんだけど」

連れて行かれたのは、昨日入った事務所のその奥にある、衣裳部屋のような6畳くらいの部屋だった。

そこには所狭しとたくさんの洋服がかけられていて。

ここの制服でもある黒いマントやスーツ、それからなぜか女性物のドレスや洋服なども―――

「え―――でも、あたしお客さんの前には―――」

「うん、聞いてるよ。でも、万が一ってこともある。もし見られても、それがバイトだってことになれば納得してもらえるかもしれないけど、普通の女子高生が出入りしてるってことがばれるのはまずいんだ」

「それは―――」

言われて見れば、その通りかも。

「で、女の子用の制服はないんだけど、一応女の子向けの衣装があるから」

と言って、一樹さんが手をかけたのは、色とりどりの衣装がかけられたラックで―――

「俺の趣味も多少入ってるんだけど、ここの衣装、日替わりで、着てくれる?」

―――趣味って・・・・・

なんとなく、嫌な予感はしたんだけど―――。

だって、かけられている服はメイドの服とか、看護婦の制服とか、チャイナドレスとか―――

もしかしなくても、これはコスプレ衣装。

「これを―――着るんですか?」

「そ。女の子用のロッカールームはないからトイレで着替えて、着替え終わったら見せてね」

そう言うと、一樹さんはその中からメイド用の服を取り、あたしに押し付けると、部屋を出て行ってしまった―――。