「ここ・・・・・?」

そこは、古い鉄格子の扉が着いている、一見洋風のお化け屋敷かと思うような門構えのお店で。

コウモリのオブジェが門の両側からあたしを不気味に見下ろしていた。

扉には、赤く『ヴァンパイア・ハウス』の文字。

そーっとその扉を開けると、中には地下に続く回廊が。

その踊り場には、ホスト達の写真が並んでいて―――

「あ―――お兄ちゃん」

真ん中にあるのは、青いコンタクトをはめた凛斗お兄ちゃんの写真。

不敵に微笑むその口元には牙が覗き、ホストの全員が黒いマントに身を包んでいて―――

「これって―――」

「いらっしゃいませ~―――って、君、いくつ?」

回廊の下、お店から出て来たらしい若い男の人が、あたしを見上げていた。

ちょっと長めの茶髪に色白の肌。

大きな瞳はぱっちり二重で、まるで女の子みたいに可愛い男の人だった。

「あ、あの―――」

「だめだめ。ここは君みたいなお子様の来るところじゃないよ。さっさと帰りな」

そう言うとその男の人はまた店の扉を開けようとして―――

あたしは慌てて回廊を駆け降りた。

「ちょっと待って!あの、あたしはお客じゃなくって!」

「は?なんだよ、客じゃないならなおさら帰れって」

「忘れ物を―――凛斗お兄ちゃんの」

あたしの言葉に、その人は目を丸くして、マジマジとあたしを見つめた―――。