桜がヒラヒラ舞って、綺麗に落ちる。

そんな哀しい春の始まり――


「ちさ~、ちっさ~!!」


わたしは朝から馬鹿でかい声を張り上げる。


まだ起きないのかな。


「……っちーーっさーーー!!」


今度は思いっきり息を吸って、更にでかい声を出した。


羞恥心なんてもんは、産まれつきありません。


「…なぁにぃ~?」


ヒョコっと二階の窓から顔を出したのは、


神田 千沙紀♀ 
Chisaki Kanda


かなり天然入ってる、わたしの親友ってやつ。


「なにじゃなくてっ!!学校!!ち・こ・く!!」


オドっとしたかと思うと、時計を手にとって青ざめてる様子。


「ご、ごめん!ゆんちゃん!」


バタバタって、慌ただしいなぁ…。


―ま、このあどけなさに惚れる男もいるんだろうケド。



フっと近くの空き地に目をやる。


そこには大きな桜の木があって。


―またヒラヒラと、花びらが舞って、綺麗に落ちる。


「ぉおーい」


少し遠くから、不意にあいつの声が聞こえた。



―そんな哀しい、春の始まり…。