あの日の願い

「ここ、は、あなたのいる世界から約400年経った世界だと思います」



400年て、すごい長い時間だ。



けれど、きっと人間なんてたいして変わらない。



「私の名前は松井千代。あなたの奥さんではないです」



「いいや、間違いなくそなたは儂の妻じゃ」



ここまで話してもまだ信じてもらえないらしい。



そんなに、私はその千代姫に似てるのだろうか。



「信じられなくても、それは仕方がないと思います」



「…そなたのこと以外は信じよう」



むすっとした顔でそう言う彼に少しだけ愛しさを感じてしまったのは秘密だ。



私のことはいい。きっと、いずれ千代姫ではないと彼自身が気付くだろう。



今は、タイムスリップのことを信じてもらえただけで十分だ。



「私の話はおしまいです。とりあえず、義春さんお風呂に入ってきてください」



はい、とタオルと友達が変態避けにと一人暮らしのお祝いでくれた男物の下着とスウェットを手渡す。



まさか、こんなとこで役に立つとは思わなかった。