「あの…、あなたのお名前は?」



名前を聞けば思い出すかもしれない。



そう思って、尋ねた私を彼は悲しそうな顔で見つめていた。



「義春じゃ。青野城城主、松平甚太郎義春。」



聞いたこともない名前。



無駄に長いし。



ていうか、この人城主って言った?



城主って、いまそんな人いるの?



それに、



「なぜ私の名前を知ってるの?」



「儂は、そなたのことなら何でも知っておる。そなたの癖も、優しさも。一緒に暮らしておったのだからな」



この人は、どこまで本気なんだろう。