先生の背中に向かって叫ぶように呼び止めると、ゆっくりと、先生が振り返ってくれた。
「ん?」
笑顔のように見えるけど、目は笑っていない。
ドキン
「あ…」
どうしても、言葉がつまってしまう。
ドキン
ドキン
ガラ
「…あら!」
ビク
「高橋先生!こんなとこで何してるんですか?」
用事をすました、保健医が戻ってきた。
「あ…今から、職員室に行こうと…」
先生がそう言うと、保健医は眉間にシワを寄せ難しい顔をした。
「それは…やめた方がいいかもしれないわ」
「え?」
「あの噂が、教頭や校長の耳に入ったみたいで…職員室の空気があまり良くないのよ」
"あの噂"って…香奈との?
先生の後ろから、その話を聞いていると保健医と目が合った。
「って…あら、やだ。生徒いたのね」
ドキン
「…この生徒は、大丈夫ですよ」
…先生ー
「生徒の噂を真に受けて…校長や教頭の耳にまで入ったとなると、めんどくさいな」
先生は、はぁ…と深い溜息をつきながら言った。
しばらく先生の後ろで話を聞いていたが、噂は本当に噂でしかない。
真実は違うと先生は言った。
でも、ここまで広まった噂を収めるのは難しい。
時が解決してくれるのを、待つしかないー…



