下校時間も過ぎ、ほとんどの生徒が帰った校舎内はとても静かだ。
「昼休み…驚いたよ」
静かな廊下に、声はよく響く。
「…」
「まさか、高橋の彼女が…妹尾さんだったなんて」
切なそうな表情をし、麻生がゆっくりと近付いてくる。
泰葉は目を合わせていられず、俯いてしまった。
あと一歩で、ぶつかってしまうという距離で麻生は止まった。
「妹尾さんに、お願いがあるの」
…お願い?
俯いていた顔を上げると、さっきよりも麻生の表情がはっきり見えた。
「…あ」
目からは、たくさんの涙が流れ落ちている。
「…私に、高橋をください」



