あたしから、バンドを取ってしまったら・・・。

そこには何も残らない。

もう、そういう体質になってしまった。


ライブの時の、あの独特の緊張感。

耳鳴り。

仲間の笑い声。

今までは、あまり耳にすることのなかった音。

ライブハウスの匂い。

もちろん、一輝にも出会えなかった。

バンドがあるから、今のあたしは生きているのだと思う。

もしも、バンドを失う瞬間が来るとするならば、あたしの心はすぐさま崩壊してしまい、修復不可能になるに違いない。



何もない、誰もいない、冷たくて、寒い世界。

真っ白な世界。



いつかは、その世界にたどり着くのだとしても、今は、今この瞬間は、ただ、ギターをかかえて、叫んでいたかった。


誰かに歌を届けようとか、そんな大それた事ではなく、ただただ失いたくない大切な宝物だから。