ドン、というドラムのキックの音がライブハウスに響き渡ると、そのすぐ後、轟音が押しよせてきた。


「キタ・・・。」

一輝のギターの音があたしを突き刺す。

心臓が痛かった、破裂しそうだ。


ステージでは、肩まで掛かるあの金と黒の髪をほどき、激しく頭を揺さぶる一輝の姿が見えた。

一心不乱、という言葉そのままを表したような、弾き方をする。

華奢ではないのだけれど、ギターを弾く指はとても細くてしなやかだった。

今の一輝には、ギターとバンドの音しか、届いていないのであろう。


うつろな目つきで、時々顔をあげるのだか、それがとても妖艶であたしの心臓をわしづかみにする。

コーラスの時の、威嚇したような表情も美しすぎた。


始まって、一曲目にして、あたしはFISH WIFE、いや一輝の虜になってしまった。


誰かが、ステージに走り寄って、ダイブをしたり、盛り上がりすぎてビールをぶちまけたりしていたが、もう、そんなことはどうでもよくて。