スタジオの翌日、あたしは一輝に名古屋行きを伝えた。

一輝は少し寂しそうな顔になって、

「そうなんだ。・・・頑張って。」

そういって、発泡酒を口に流し込んだ。


「・・・・、あのさ。一輝。あたしから言うのもおかしいのかもしれないけど・・・。あたしたち、つきあえないのかな??」

「・・・・・・。」

「一輝の、気持ちが知りたいよ。」


一輝は、もう一度残りの発泡酒を口に流し込んで、空になった缶をテーブルに置くと、話しはじめた。


「俺は、咲さんのこと、とても大切だと思ってる。こんなに話しの合う知り合いって、ほんとに居ないから。だから、ずっと、友達では居たいと思ってる。咲さんが辛いときには支えてあげたいし、うれしいことは共有したい。」

「うん・・・・・・・。」

「でも、関係が恋人、になると、関わり方が違ってくると思うんだよね。俺も咲さんも、縛れてしまうというか。自然で居られなくなる気がする。」

「・・・・・・・・・。」

もう、その先の言葉がみえてしまって、瞳に涙があふれてきてしまった。

「おれ、今は恋人作る気はなくて・・・。バンド、ちゃんとやりたいから。」

「・・・・・・・・・。」


「だから、ごめん。つきあえない。・・・・・でも、友達で。居て欲しい。」



勝手だ。

そう思った。



でも、一輝からしたら、あたしだって勝手なのだ。


勝手同志で話し合っても、結論なんて出るわけないから。