本社からほど近い、パスタ屋に移動して、注文したカルボナーラをほおばっていると、突然、清水が話しを切り出した。


「実は、咲ちゃん。今日は大事な話しがあって、呼んだんだよね。」

「はぁ・・・。」

パスタを巻いていた手を止め、清水と山下の顔を交互に見た。

「あのさ、前々から、咲ちゃん、マネージャーになりたいって、言ってたじゃない。」

「はい。」

「今。名古屋方面の方のショップが、いまいち売り上げも人事も良くなくてさ。」

「名古屋に、行ってもらえるかな?」

「・・・・・・。」

「名古屋で結果だしてくれば、マネージャーに昇進って道が出来るんだけどね。」

「・・・・・・。」

突然の話しの内容に、フリーズすることしか出来なかった。都内を離れる??

バンドは??どうなるの??

一輝は??どうするの??


「本社からの辞令、なんだよね。」

清水は、申しわけなさそうに、あたしの顔を見つめていた。

何がなんだか、わからなくて、通りに打ち付けられる、雨の音ばかりが耳について、気分が悪かった。


「・・・・・・。辞令ってことは。断れないって事ですよね。」

「まあ、そうなるかな。」

「・・・・・・。じゃあ、行くしか・・・・。ないんですよね。」

「結果だしてさ、一緒にマネージャーがんばろうよ。」

山下のいかにも、作り笑いな感じに腹が立って、笑うことも、返答することも出来なくなってしまった。



突然、こんな話しってあるの?

これが、社会の厳しさってやつなのか??



なんだかくやしくて、涙が出てきてしまった。

会社という、大きな組織の中では、あたしはただの兵隊にすぎないんだ、きっと。