裕典は、いつものことか、というように、笑ってあたしの話しを聞いている。

「ずっと、ずっと、一緒に居て、いつも優しくて・・。いつも、話し聞いてくれて・・・。」

「・・・・。」

「でも、付き合ってくれるわけでもなくて。他に好きな人みつけろよ、とか平気で言うし。意味わかんないのは、裕典じゃん。」

「・・・・・。」

「友達でもなくて、恋人でもなくて、それから先がいつも見えなくて。不安になるんだよ。不安になるから・・・。だから、もう、一緒には居ない方がいいよ。


「・・・・。」

「・・・・。あたしさ、ちゃんと好きな人、できたから。」

「・・・・。」

「だから、もう会わない。裕典とは・・・、会えない。」

泣き崩れそうなあたしを見て、やさしく微笑んだあと「そっか。よかったね。」そう言って、あたしの頭をポンポンと優しくたたいた。

「忘れないよ、忘れるわけないよ。」

もう、声にならなかった。
このまま、ずっと居られるはずだと、心の何処かで想っていたんだ。

でも、今、はき出された言葉が、あたしの本心なんだろう。

「うまく、いくといいな。」

「うん。」

「ちゃんと、好きな人、出来て、俺も安心したよ。」

「うん。」

「じゃ、俺行くわ。もう、一緒に居ない方が、咲も楽だろ。」

「・・・・。」

「ごめんな。今まで、ちゃんとしてやれなくて、ごめんな。」

少し、震える声でそう言い、裕典はあたしを置いて、歩きはじめた。