金と黒が混じり合った肩にかかる髪を、後ろでひとつに結んでいた。

おしゃれでも綺麗でもない、格好なのに、きっと一輝の整った顔立ちのせいだろうか。下品な感じがしないのだ。

あたしが普段行くライブのジャンルはどちらかというと、汚らしい格好や下品な感じを漂わせている人も少なくない。そういう人たちは、言動もやはり下品だったり、人の事を考えてなかったりするので、打たれ弱いあたしは苦手だった。

その中で、やはり一輝はとても綺麗に見えたのだ。


「じゃ、俺、そろそろ出番だから。戻りますよ。」

「そうなんだ。じゃあ、あたしたちも急いでビール買って見に行くよ。久しぶりだから、楽しみにしてる。」

「はい、いつも俺は全力投球ですから。じゃあ、咲さん、また。」

「あ、はい、頑張ってくださいね。」

そういって、一輝は出会ったときと同じように発泡酒を持った手をさっと挙げて、あたしたちの前から去っていった。

「咲。一輝くん、かっこよかったでしょ。」

「そうだね。ものすごい顔が整ってる。綺麗な顔してる。」

「咲はイケメン好きだもんね〜。惚れちゃいそうでしょう。」

あたしの肩をこつんと、叩きながら可奈はうれしそうに言った。

「やだ、そんなことないってば!もう。」

「うそうそ。さあ、早くしないと一輝くんのバンドはじまっちゃうよ。行こう
。」

そういって、あたしたちはコンビニで急いで買い物を済ませた。

コンビニで500MLの発泡酒を2本を買い、朝から何も口にしていなくて、小腹が空いたので、ほかほかと湯気をたてている肉まんをほおばりながら、ライブハウスへと戻った。

一輝たちのバンドはまだ始まってなかった。

一輝のバンド、FISH WIFEはボーカルの憲次、ギターは一輝、ベースの高橋(彼だけは常に名字で呼ばれている。)ドラムのタカの4人編成。

ジャパニーズハードコアと呼ばれるジャンルの中では、最近ファンもついてきて、地方でのライブも重ねたりと、精力的に動いているバンドの一つ。

昨年、海外のレーベルから、7インチのレコードも出していて、こちらもインディーズを扱うレコード店ではなかなかの売れ行きのようだ。

今日のイベントもFISH WIFEが目的という、パンクが好きなKIDSも多い。