それから、しばらく池の周りを、途中たばこをふかしながら、ゆっくりと歩いて回った。


あまりにも幸せな時間だったので、どのくらいの時間が経ったのかも、忘れていた。



「ところで、今何時なんだろう?」

「えっと・・・。11時ちょいすぎかな。」

一輝はポケットから携帯を出して、答えた。

「げ、まずい。あたし、もう帰らないと、終バス間に合わなくなっちゃう!」


あたしは横浜市に住んでいたのだが、横浜駅からバスで30分近くかかる、横浜市の端っこに住んでいた。

「一輝くん、ごめん、あたしもう帰らないと!バス間に合わなくなっちゃう!」

急に現実に引き戻され、慌てて言うと、少しの間のあと、

「じゃあ、うちに来ますか?俺んち、近いんで。あの、咲さんが嫌でなければ。」

「・・・・、でも。悪いし。」

「俺は全然大丈夫ですよ、明日休みなんで。」

「・・・、そうなんだ。・・・じゃあ、お邪魔していいですか?すいません。」

「どうぞ。」

「ほんと、ごめんね。」


一輝のうちに急に泊まることが決定し、なんだか今日一日で、いろいろと二人の間で変化が生じていることを感じずにはいられなかった。

この時は、きっと良い方向に、向かってるんだと思って疑っていなかった。