奏は昔から人気者だった。
幼稚園の頃だって、小学校の頃だって。


そして、高校に上がってさらに拍車が掛かったかのようにモテだした奏。私なんかが傍にいてはいけないような、そんな存在になってしまった。




「比奈はともかくさ。」

「ん?」


聡子はじーっと私を見つめながら呟いた。



「奏くんは比奈好きだよね」

「…は?」


どっからどう見れば"好き"になるのだろう。毎日毎日女らしく!なんて言われている私が好かれてるなんて有り得ない。


好かれたい、そうは思っていても。






「菜々ちゃんいつも可愛い!」



遠くで奏が誰かを褒める声が聞こえた。






「…あんなんが?」

「いや、奏くん比奈だけ態度違うよ。見てて分かる。なんか優しいっていうか雰囲気がね。」




私はチラリと教室の中心を見る。




大きな口をあけて笑う奏。
周りの女の子。

簡単に奏に触れる彼女達。




「有り得ない」

「そうかなー?」


聡子は納得いかない顔をしながらも、私がもうその話に興味が無くなったことを察したのか違う話へと話題が進んだ。