「鈴、どういたしまして。」

きっといつもみたいに笑ってくれているん

だろうな。

わたしもそうやって笑ってみたい。

「あのね、今どこにいるの?」

湊を横目で見ると、湊も電話している。

「今、たぶん近くにいるよ。

さっきから、歩き回ってたけど、あんまり

遠くには行ってなかったから。」

そう言うと大きな声が聞えた。

「鈴ー!!」

どうやら、桐の声。

傍に寄ってくる桐に距離を離していく。

「恥ずかしい。」

そう言って後ろにバランスを崩して豪快に

転ぶと思ったら痛みも感じなかった。

目を開けると、

「大丈夫!?」

心配そうに顔を覗きこんでくる尚がいた。

「鈴、なんで逃げるの!?」

そんなのわかってよ。

「だって大きな声で言うから。」

恥ずかしいじゃん。

って言おうとしたのを満に遮られた。

「良かった。無事で何より。」

いつもはクールそうな満に

心配を掛けさせてしまったことに

反省した。

「ありがとう。見つけてくれたのは、

やっぱりみんなだった。」

きっとこれからも迷惑ばかりしか

かけないだろうけど、いつもありがとうって

言葉を胸に秘めているよ。

「あのさ、そんな可愛いこと言って

くれちゃったら困るよ。」

桐は何を言っているのか?

「可愛いって誰が?」

湊もこちらに振り返り笑う。

「誰って鈴以外に誰が可愛いって言うの?

その鈍感さはきっとこれからも変わらなそう。」

そう言うからほっぺを抓った。

「桐の癖に。」

照れを隠したつもりなのに周りには

バレバレ。

「鈴照れてる?」

桐の意地悪はわたしを窮地に追い込む。

「照れないもん。照れてないもん。」

わたしばっかり苛めないでほしい。

そういえば、菜穂ちゃんに聞いたことがある。

「意地悪するってことは、少しでも気があった

りして?」

特に気にもとめずにそう言うと、

周りの空気が重くなった。