「そろそろ戻ってもいいころなのに遅いな。」

この人は、きっと待つって言葉しか知らないだろう。

「湊、電話すればいいんじゃないかな?」

わたしがそう言うと、

「そっかぁ。じゃあ鈴が尚に電話して、

桐と満は僕が電話しておくからね。」

気づくと即行動派の湊はさっそく電話を

かけていた。

「尚のケータイとかって知ってるっけ?」

そういえば、知ってるのか!?

という問題に差し掛かりケータイを手に

小畑を探す。

「・・あった。」

いつか知る機会があったのだろう。

あまり深くも考えずに電話する。

コール音がドキリとさせる。

「・・もしもし。」

意外と低い声が耳に届いた。

「もしもし。」

電話って怖くなる。

言葉が急に出てこなくて頭を真っ白にさせる。

「鈴?」

でも聞えた声は、優しい声だった。

「尚。ごめん。急にいなくなって探して

くれたんだって?尚には心配事させて

ばっかりだね。迷惑かけてごめんね。」

言いたいことは口から出てこない。

「鈴は、ホントにそう思っていると思うの?」

低い声に言葉が出なくなる。

「迷惑なんて思ったことないよ。

逆にもっとわがまま言って欲しいぐらい。

振り回してくれてもいいんだ。

鈴から、離れて行こうなんて思わない。

だから、鈴の口からごめんって言葉

聞きたいわけじゃなかった。」

わたしだってごめんって言いたいわけじゃないよ。

もっと違う言葉があると思う。

でも、急に怖くなるの。

「・・・尚、ありがとう。」

小さくなった声に気づいてくれたか

心配になる。