夏の夜のことだった。
携帯には先輩から、次のメールが入った。
〔菱田さんって知ってる?同じ学校の1コ上だよ。今、彼女の家にいて、身だしなみのレクチャーを受けているの。
よかったら、ソラさんも来て!松田さんたちも来るよ。〕
松田さん・・とあるようにどうやら、女の子の集まる会合らしい。
仕事の中で新人を意識していた私は、何事も社会経験と思って車を走らせた。

先輩の案内に従って到着したのは、ごく普通のどこにでもある家だった。
窓から顔を出した菱田さんの顔は、そういえばどことなく見覚えがある感じ・・・。
先日、河原で行ったばかりの花火大会で、一緒になった2歳上の松田さんもいた。
そして、女性たちはぞろぞろと、菱田家にお邪魔する。

二階に上がると間もなく、一室の戸が軽やかに開いた。そこには何故か、一人だけ、年長の女性がいた。
“まるで知らない人だった!”
平均年齢が概ね21歳の空間の中で、この女性のみが35歳前後、お洒落で、綺麗な彼女からは大人の香りがした。

次に、この場面がその人によって詳しく、“香水の講習会”であると知らされたのだった。
イベントの最中、次々に登場する香水のボトルは綺麗で、皆、レクチャーと称してつけて貰う、華やかな匂いを純粋に楽しんでいる。
年長の女性は、諸岡さんといった。彼女はたちまち、その場のリーダーとなった。
“この香水の良さを広めるべく、努力する女性が諸岡さんである”という、菱田さんやモリ先輩の紹介には、敬意と憧れの感情が熱くこもっていた。