あれは、いつの場面だったのかな・・・。
お気に入りの音楽を聴いている私と、淡い陽射し。
そうそう。屋上に続く階段の途中には、居心地のいい中二階があったっけ。
気が向いた時に私は、こっそりとそこへ行くのだ。
そんなある日の放課後・・・、珍しく雨ちゃんまで、そこにやって来たのだ。
そして、雨ちゃんの後ろからはのそり・・・、のそりともう一人もやって来た。
『誰だろう?』と密かやかに思っていると雨ちゃんの方が、まだ、尋ねられてもいない質問に回答してくれたのだ。

「ソラさん!コノ人、カヤって言うの。勝山美玖ちゃん。」
「・・・は、ドモ。」
紹介された本人はすかさず、私に、丁寧すぎない会釈を見せた。
そして、人見知りもせずに話しかけて来る。
「何、聴いているの?」
「あ、これ、giftだよ。知ってる?」
「あー、gift。へー、そういうの聴くんだ?んー、いいじゃん♪」
そんな感じで初対面なのに、5分前から話していたような、奇妙で、自然な会話が続いたのだ。

*

「てゆーかソラさん、聞いてる?!」
その言葉で私は、ついに我に返った。
目の前には、雨ちゃんがいた。
と言っても今はもう、学生カバンすらない部屋で、私たちは話し合っていた。
「えーと、何だっけ?」
僅かな照れ笑いを漏らしながら、私は、お詫びの感情をも込めて、雨ちゃんに向かって聞き返した。
・・・そうだ、そうだ、そのカヤさんの話をしていたのだった。
回答者からカの字が出た途端、私は、本来の状況をはっきりと思い出した。