バイク持ってた人……?






って、どこに!?誰だそれは!?






思わず、彼氏じゃねぇよな?と、詰め寄りそうになって、思い止どまる。






俺が人生で初めての彼氏だと言った乙葉を、信じたい気持ちが自分の中にあるから。






代わりにフツフツと沸いてくる猜疑心をなんとか深呼吸で掻き消し、






「もしかして、それってホスクラの従業員?」






声のトーンを極力抑えて、俺はさりげなく尋ねた。






心の中では無理矢理クールぶってる自分を嘲笑いながら。






「うん、そうだよ? 大学生は車よりバイクの人が多かったから、乗せてもらえる機会が結構あったの。
冬のバイクってめちゃくちゃ寒いよね。
怜二は大丈夫?風邪ひいてない?」






なのに、そう言って心底心配そうに俺を見上げてくる瞳が、とうとう俺のなけなしの理性をぶち壊した。






もう俺以外の男の単車のケツになんか乗んなっ……!







「……んっ……ふっ…」






気づいたら、乙葉の柔らかい唇を貪っている俺が居た。






「……怜…二……苦し…いよ……」






懇願する声にハッとして顔を反らす。






途端に、すぐ隣からハァ…と苦しそうな吐息が聞こえて、一気に正気に戻された。






やばい……
俺の理性、限界に近いのかもしんねぇ……






“乙葉だけでいい”






この気持ちに決して嘘偽りはない。





だけど、逆にこの気持ちが自分の中で裏目に出始めてることを、俺はこの時初めて知った。






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