「とりあえずコーヒーね」





我が家のソファーにどかっと腰を下ろすなりそう言った朋歌は、持っていたコンビニの袋から早速ガサガサと大好物のお菓子を取り出し始めている。






『とりあえずコーヒー』って、ここは喫茶店じゃないんですけどっ!






そんな朋歌の背中に心の中で愚痴りながらも、渋々キッチンへと向かうあたし。






「ああ、そうだ。あたしが作ったビーフシチュー、食べ…」



「ないっ!」






……へぇへぇ、そうでございますか。
すみませんねー、ろくな料理も作れませんで。






再度心の中で愚痴りつつ、鍋へと伸ばしかけていた手を引っ込めて、かわりにヤカンを火にかけた。






「ブラックだっけ?」



「当たり前」






こちらも見ずに答える朋歌。





うぐぐ……いちいち勘に障る女だね、アンタって。






やがて沸いたお湯でコーヒーとココアを作って、あたしもソファーへと座る。





「はい、コーヒー」



「サンキュ。
コホン……ではでは、生徒が揃いましたので、早速予習を始めましょうか」






そう言ってバッグを漁りだした朋歌は、1枚のDVDを取り出して、それをあたしの前へと置いた。






「こちらが本日のテキストでございます」






そのかしこまった言い方とは裏腹に、目の前のDVDはどどどどピンクの派手なパッケージで。





一瞬見ただけで、あたしはクラ〜と後ろに倒れそうになった。






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