途端に、ホッとしたような拍子抜けしたような気分になったあたしを、しょうがないなって顔した郷野さんが振り返る。





「姫も、ここではもうちょっとお行儀良くしなきゃね」



「………はい」



「代わりと言ってはなんだけど、あともう少しで怜二上がるからさ、ここで待ってればいいよ」



「えっ……?なんて……」





あたしの問いかけに答えることなく、じゃあね、と片手を上げた郷野さんは、またバックヤードへと姿を消した。





怜二がもう少しで上がり……?




ホントかなぁ……





残されたあたしは、郷野さんの言葉にしきりに首を傾げて考え込んでしまった。





だって、怜二はいつもお昼過ぎに起きてからバイトに入るから、ラストまでみっちりあるんだもん。





こんな早くにバイトが終わったことなんてないのに……





怜二に確認しようにもまた注意されちゃうしな……






って、アレ?





怜二が、居ない???






ホールに戻ったはずの怜二の姿が見当たらなくて、キョロキョロしてたあたしに、






「………おい」






再び背後から声が掛かる。





………って、




やっぱりいつの間に!?






毎回気配を消して現れる怜二にぎょっとなるあたしを嘲笑うかのように鼻を鳴らした怜二は、不敵な笑みを浮かべて言った。





「あとちょっとで終わるから、ここで待ってろ。
その手の理由は、後でみっちり俺んちで聞くからな」







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