甘やかされているといえば、あたしはあれから、毎日料理修行に励んでいる。






だからこんなに見るも無惨な手になっちゃったんだけど……






それはもちろん、凌ちゃんにいっぱい無理をさせて協力してもらいながら。





なんだかんだいって、一番あたしの面倒をみてくれる凌ちゃんに、散々甘やかされてると自分でも思う。






なのに……





なんであたしはこんなに不器用なんだろ?






一向に上達しない自分に、ほとほと嫌気がさしてきてしまった。





こんな傷だらけの手を見たら、怜二だって引くかもしれないよね……?






ふと気になって怜二を探すと、ちょうどテーブルを片付けてる怜二を見つけた。





器用にトレイにお皿を載せながら、時折隣に座るお客さんと言葉を交わしている怜二。






その横顔が、誰よりも大人に見えて切なくなる。






こんなあたしなんかで、ホントにいいの……?






「ひ〜め」



「へっ!?
……ああ、郷野さん。お邪魔してます」






ぼんやりしてたら急に声を掛けられて前を向くと、カウンターの向こうからマネージャーの郷野さんが笑いながらあたしを見てた。






そう、あたし、なぜかこの店では“姫”なんてヘンなあだ名を付けられている。






「な、なんですか……」






まだニヤニヤしてる郷野さんを軽く睨み返しながら、あたしは椅子に座り直した。







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