「ちょっと、怜二?……ねぇってば」





再び引っ張られたエプロンにはっとして振り返ると、





「……なんで怒ってるの?」




心外だと言わんばかりに、眉間にくっきりシワを浮かび上がらせた顔が俺をにらんでいた。





「い、いや…… さすがルイだなって……」




いくらただのカフェとはいえ、ここはホストを目指す男達の登竜門となってる店。




もちろん、“自分の恋愛事情は伏せておけ”が鉄則だ。




慌てて真顔に戻すと、俺は彼女達の方へと身をかがめた。




「……えっ…」




途端に俺との顔の距離がグッと縮まったことに、その頬に一気に赤みがさす。





「俺も見習わなきゃ……ね?」



「う、うん… 今度来た時には、お願いね?」



「わかりました」




内心では、誰がするかバ〜カ!と悪態をつきつつ、一転して嬉しそうに笑顔を浮かべる彼女達にもう一度丁寧にお辞儀をして、俺は席を離れた。






もちろん、行き先は―――




「……いらっしゃい」





愛しい、愛しい、彼女の元。





「いいの?接客中だったんでしょ?」




その彼女は、店内では意外にも俺には冷たいんだけど……






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