よく考えたら、なにも言われた記憶がない。





中学まではあんなに『彼氏はいるのか?』『好きな男は?』『どんな男だ?』なんて、しつこいぐらいに聞いてきたのに。





いざ怜二が彼氏だって紹介した途端、なにも言わなくなった凌ちゃん。





ママには、『いい男捕まえたじゃない!さすがあたしの娘♪』って褒められたけど。






「怜二に……作ってあげようと思って……」





恐る恐るあたしが切り出すと、凌ちゃんは小さな声で、だろうな…とだけ言った。





気まずい沈黙に耐えられなくなって、あたしはなんとか正当そうな理由を探す。





「ほらっ、怜二って一人暮らしでしょ?色々大変だと思うんだ。学校とかバイトとか…」



「そうか?アイツはかなり要領いいぞ」



「でもね、学校では、結構疲れた顔してるんだよ?毎日寝てばっかりだし」



「ふ〜ん…、まあたしかにアイツ、最近シフト増やしてるからな……」



「そうでしょ?彼女として、あたしだって何かの役に立ちたいの!だから…」






途中から持ってた人参をほうり出して、あたしが縋り付きながら訴えると、






「……ふっ…、やっぱり乙葉は杏奈の娘だな……?
言うことまでそっくりだ……」





そう言って凌ちゃんは、どこか遠い目をして口をつぐんだ。






ママと……?





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