「お、乙葉が……料理……」





まだ言うか!





「とにかく教えてよーー!!」






なぜか怯える凌ちゃんを説き伏せて、なんとか料理を教えてもらえることにはなったんだけれど−−−





「コラッ!米を洗剤で洗うな」



「玉ねぎは茶色のだけ剥けばいいんだっ!」



「どうやったらピーラーでここまでじゃが芋が小さくなんだよ!」





いちいち口うるさいったらありゃしない。





「だってぇぇ」



「だってもクソもねぇ!カレーなんて小学生でも作れるぞ!」




いつもは温厚な凌ちゃんが、鼻息荒くあたしをにらみつける。





あたしは、6年生の時に行ったキャンプを思い出して口を尖らせた。





「ううん、そんなことない。あたしは小学校の時も作れなかったもん」





作り始めた途端、先生に『呉林さんはサラダ用のレタスをちぎろうっか』って言われて、カレーには一切触らせてもらえなかった思い出が。






「はぁぁ… 一体なんなんだよ……?いきなり料理がしたいなんて……」



「そ、それは……」





怜二の通い妻をするためって言ったら、凌ちゃんはなんて言う……?





早くにパパを亡くしたあたしを、時には父親のように、時には母親のように育ててくれた凌ちゃん。





忙しいママの代わりに、よく授業参観にも来てくれたっけ?





目立たないようにって、わざわざ髪を真っ黒に染めて。





でも、ホスト気質は抜けないのか、愛想を振り撒きすぎて、他のクラスのお母さんにまでしゃべりかけられてたよね。





凌ちゃんは、あたしと怜二が付き合ってること、どう思ってるんだろう?






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