そんなあたしに、しばらくジトッとした視線が送られていたけれど、急に体が軽くなった気がした。
というより、やっと朋歌の腕から解放してもらえたらしい。
「ふぅ…… たしかにこういう場所で話す内容じゃないわね……」
よ、よかったぁぁ…
わかってくれたんだぁぁ…
心の底からほっとなる。
でも、油断は禁物。
視線だけを動かして、背もたれに大人しく収まった朋歌を盗み見た。
外へと顔を向けている朋歌の横顔は、まさかあんな言葉が出てくるとは思えないほど綺麗で。
あたしをギャップ女だと言うけれど、朋歌も充分ギャップの激しい女だと思う。
「……チッ…」
ん?今舌打ちが聞こえたような……?
「明日……」
「へっ!?」
いきなり話し出した朋歌に再びビクッとなる。
「アンタん家に泊まりに行くから」
「………え?」
「DVD持って」
「……はい?」
「今日晋ちゃん家に遊びに行くからさ、エロいの借りてきてあげる」
「ま、真鍋先輩からっ…!?」
とっさに朋歌の彼氏である真鍋 晋也先輩の顔を思い浮かべた。
“キモダサ野郎”モードの怜二とは違って、見るからに頭が切れそうなインテリ眼鏡をかけた真鍋先輩は、ホントに頭が良い。
通ってる高校も超一流で、目指すは弁護士なんだとか。
顔はもちろんイケメン。
大人っぽい朋歌をさらに上回る落ち着きぶりで、2人が並ぶとたちまち洗練された大人の男女に見えるほど。
そんな先輩が……
「そういうの、持ってるの……?」
持ってくると言われたことより、そっちの方が気になってしまった。
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