「なんで…どうして…」





やっぱそうくるよな……





「時給がいいから」



「でもっ…」



「とにかく今は、金貯めたいから辞められない。
いずれ辞めるけど……悪いな」





あんな稼げるバイト、他にないし。





そっと乙葉の頭を撫でてやると、乙葉は苦渋の表情を浮かべて言いにくそうに呟いた。





「………そんなに…お金に困ってるの?」



「えっ……ああ…うん…」





涙目の乙葉の口から、全く見当違いの言葉が飛び出してドキッとなる。





でも今は、その勘違いにノっとくか。





「一人暮らしってさ、意外に金かかるし」



「じゃあ、あたしもバイトするから…っ…
怜二の力になるから…っ…」





縋り付くようにもう一度掴んできた手が、その必死さを物語っていた。





こんなことを言われるのって、かなり男冥利に尽きると思う。




柄にもなく、ますますコイツを大事にしなきゃって、喜ぶ顔が見たいって思っちまうじゃねぇか……





「ありがとな……」





そのぷっくりした唇に、触れるだけのキスをすると、瞼を閉じた乙葉の瞳から一筋の涙が零れた。





途端に胸がギュッと苦しくなる。





こんなに自分が恋愛なんかに溺れるとは思ってなかった。





いや、それ以前に、愛しいと思う感情が残ってること自体、驚きだった。






母親に捨てられて、女なんてって思ってたこの俺が……







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