その疑問に答えをくれたのは、ニヤリと笑った凌さんではなく、左隣りに立つ郷野さんだった。






「ああそうか… お前居なかったよな?この話をした時」



「はい、早番だったんで」



「まあ簡単に言うとだな、ホスト体験をしようってイベントだ」



「………はっ??」






クリスマス・イベントがホスト体験?
ますます意味わかんねぇよ。







「ここに居る6人と、今日休んでる2人で、その日だけホストになって接客すんの。
そうすれば客も喜ぶし、ゆくゆくはホストにって願望がある俺達も、気軽に体験が出来るってわけ。
まさに一石二鳥だろ?」



「いやいや、会社側もお前達の適性度が計れるから一石三鳥だろーが」






最後に付け足すように笑った凌さんを振り返る。






「冗談でしょ。俺はそんなイベント…」



「一番人気が高かった奴には報奨金10万が会社から出る」






参加できません、そう続けようとして凌さんの言葉にはっと息を呑んだ。






だって10万だぞ、10万。






喉から手が出でるほど欲しい金額じゃねぇか!







“怜二にホストなんてして欲しくない”






一瞬、泣きそうな声で言った乙葉の顔が浮かんだけど、





たった2日やればいいだけだろ……?
体験したからって別にホストになるわけじゃねぇし……






それを都合のいい言い訳で振り払って、俺の心は決まった。







「喜んで参加させてもらいます」






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