俺にとって願ってもない話ってなんだよ……?
まあ十中八九、例のモノに関わる話なんだろうけど………
俺はカウンターの中でぼんやりとトレーを拭きながら、凌さんにあの話を持ち出された日のことを思い起こしていた−−−
「怜二、手が空いたらちょっと事務所まで来てくれるか?」
「……はい」
このバイトを始めて一ヶ月あまり。
これは、いよいよ乙葉のことで凌さんと直接対決か……?なんて想像して、俺はかなり緊張しながら頷いた。
コンコン−−
「怜二です。失礼します」
今から何を言われようと絶対に乙葉は手放さない、という意気込みでドアを開けた俺を待っていたのは、
「お疲れさん。悪いな、呼び出して」
意外にも穏やかな顔をした凌さんで。
「いえ… それより話って…」
「まあ焦るな。コーヒーでいいか?」
「え…、あ、はい」
少々拍子抜けしてる俺の前で、内線で「事務所にコーヒーを2つ頼む」とオーダーをした凌さんは、俺にソファーに座るよう促して言った。
「話は、コーヒーがきてからな」
「……わかりました」
それは暗に、今から話す内容は俺以外に聞かせたくない話だ、と言ってるんだろうと思い、俺は深く頷いてからソファーに腰かけた。
しばらくして、コーヒーをトレイに乗せた郷野さんが現れ、俺に心配そうに目配せしながらまた出て行った。
「……さて、大事な話を始めようか」
そう切り出した凌さんを、生唾をゴクリと飲み込んでから、俺は真っすぐ見据えた。
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