「なぁなぁなぁ…」



「………だから何だよ?」





店の休憩室兼更衣室で、お前は盛りの付いた猫かってツッコミたくなるほどうっとおしく体を擦り寄せてくる悠紀を一瞥して、俺はエプロンの紐を結ぶ。






「だからさぁ、さっきから乙葉ちゃんにクリプレ何やんの?って聞いてるんじゃんか」






……ったく、しつけぇな。





「だから言ってるだろーが。秘密だって」



「そこをなんとか教えてくれよぅ……
お前だって知ってるだろ?俺が大学生と付き合うの初めてだって。せめて相談にのるくらい…」



「はぁ?そんなの知るかっ。別に今までの彼女と見た目の歳、変わんねぇじゃん、今の彼女」






俺はため息をつきながら、つい最近見かけた悠紀の彼女の風貌を渋々頭に思い浮かべた。






………いや、違う、
アレは変わらないじゃねぇ……それ以下だ……






大学生だと言うのに、まだ中学行ってます、と言っても十分通じるような童顔で、






おまけに着てる服もキャラクターものだったようなその子は、イケイケ好きの悠紀にしたら、かなり冒険したなって思った記憶がある。






でもどっちにしろ、俺に相談するのはお門違いだ。
その理由はいたって簡単。





「あのさ、俺がクリスマスどころか、誕生日にさえ女にプレゼントしたことないって知ってるだろーが。
ってことで、この話はもう終わりな」






ってわけ。






そう言い捨てて出て行く俺の後ろから、ケチっ!なんてぼやく声が聞こえたけど、俺は構わずドアをきっちり閉めてホールへと向かった。







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