中から顔を覗かせたのはたった一枚。たった一行の淡白な内容の手紙。


[約束の場所で、約束の時間。]


それだけの、本当にそれだけの簡素な手紙。


果たして約束の場所、時間とは何処だっただろうか。沢山の場所で過ごした、沢山の時間。


その中には約束したことがあったかもしれないが。


若さゆえの曖昧な記憶に苛立ち、悔やむ。


それなのに、僕は翌朝すぐに会社へ休暇願いを届け出していた。


それでも彼女に会いたかったから。


忙しい時期だったからかもしれない。


少し長めの休暇を取った僕。といっても一週間程の休暇だが。


故郷の小さな街の駅の古ぼけたホームに立っている。


さて、まずは何処へ向かおう。やはり一先ずは実家へ行くべきなのだろうが。


軽い疲労感に襲われた僕はベンチに腰かけた。


流石に長旅が堪えたのか、瞼が重たい。


いつの間にか僕は、柔らかな風に飲み込まれていった。





ああこれは夢か。


真新しい学生服の可愛らしい少女が立っている。隣には眠たげな顔をした少年。


君と僕が映る、セピア色の景色。