川口のまんざらでもない笑い顔を見て、相田の心にどす黒い感情が沸き起こった。
(てめえ、いっぺん死んでみるか!?)
「おいおい、そんな怖い顔をするなよ。悪かったな、お前の事情も考えずに成功者である俺の話ばっかりしちゃって。それじゃ、俺はこっちで知り合った女と踊ってくるよ。邪馬台国の女はスペイン女の次に積極的だぜ。女房をTOKYOに置いてきて正解だったさ!こっちの女は朝から肉料理だからな。50を超えた胃弱な日本人女性には合わない風習さ!」
川口は離れたテーブルで談笑していたグループの中の女性に声をかけると、彼女を誘って踊りの輪に入っていった。
(ふん。卑弥呼様のありがたいお告げってのもどこまでかな!いや、それが的中する可能性だってあるにはあるさ。それを当事者のお前がまだ知らないだけの話でな)
相田は広間に散り散りになっている亡命官僚仲間に視線を送った。それを受けた同胞たちが眉をちょっと上げたり、軽くうなづいてみせたり、合図を返す。
音楽はいよいよ激しさを増し、人々は美酒と宴に酔った。

その頃、イシュタル郊外の川辺では、若い恋人達が夜空を見上げながら淡い時間をすごしていた。