第八章・名探偵コナソ


「これは大変なことになりましたなぁ。しかし相田さん、なぜあなたがここに?」
日本大使館執務室に入ってきたエンキドゥは、顔色の悪い相田に話しかけた。部屋の中を大勢の警察官が現場検証している。川口はすでに救急隊によって運び出されていた。床の絨毯には、赤いしみと八つ橋がだけが残されている。
「大使の川口とは同期なんですよ。今日、彼の仕事が終わってから一緒に飲みにいこうと約束していたので」
「そうでしたか。お知り合いがこんなことになって、本当にお気の毒です。そしてもうひとつお気の毒な事に、こちらに居合わせてしまったがために、あなたも現在重要参考人の一人になってしまったわけですな」
「そう・・・でしょうね。第一発見者ですからね」
「私どもとしても、早く事件を解決せねばなりません。なんせ外交官が殺されてしまったのですからね。大変な国際問題だ」
エンキドゥは探るように相田の顔をじっと見つめてから、次に執務室の入り口の方を振り返った。