エンキドゥは顔を強張らせ姉を見つめた。
「ちからを、使われますか?」
「わらわのちからは科学的証拠が残らないだけにこのような場合は都合が悪いのじゃが、ようは使いようじゃ。ある程度筋書きは考えてある。あとはお前がうまく運ぶのじゃ」
「分かりました。姉上、超常のちからを使うのは姉上のお体にも負担が大きいはず。くれぐれもご無理をなさらぬよう」
「エンキドゥは優しいのぅ。さて、わらわは祈祷に入るとする。しばらくはお前とも面会できなくなる。そちらは頼むぞえ」
「御意」
卑弥呼は部屋の奥に祭られた祭壇に向かい、御幣を振りながらぶつぶつと祝詞を唱え始めた。エンキドゥは少しの間、卑弥呼の後姿を畏怖と悲しみの混じった表情で見つめたが、やがてくるりと背を向けて無言で部屋を出て行くのだった。