第七章・そばにいるね


フィガロと相田たちの手紙のやり取りの後、さらに数日がたった。
イシュタルパレスの最深部、女王・卑弥呼の私室である『祈りの間』ではこの国の権力を掌握する二人の密談が行われていた。
「どうじゃ、あの男どもは」
「はっ。十中八九、日本が送り込んだスパイとみて間違いありません。リーダー格の相田という男、頻繁に日本大使館の川口と密会をしているようです。そのほかにも、市内の家電量販店で大量の乾電池を買いつけている姿が目撃されています」
「うかつなことじゃな。自分が監視されていることも考えぬのか」
卑弥呼はまじない道具の亀の甲羅に指をはわせながら、唇をぺろりと舐めて妖しい笑みを作りエンキドゥを見つめた。
「しかしスパイ行為を公然と告発するわけにもいくまい。つつかれれば痛いのはこちらの方じゃ」
「ならば、いっそ強硬手段にでますか」
「うふふ・・・法にのっとれば外交官には手出ししようがない。しかし、このまま好きにはさせておけんじゃろ?」